今回は、現役動画編集者の立場から、動画案件で他の人と差をつけるための「音声」について考えていきましょう。
はじめに
AIが文章を書いたり、画像を生成したりできるようになり、今度は動画も作れるようになってきました。動画が普及し、誰でも簡単に動画を作れるようになったのは良いことです。ただ、その一方で、似たようなクオリティや内容の動画が大量に作られ、個性がない動画があふれてしまっている現状があります。
そんな個性がない動画に、手軽に個性を加える方法として今注目されているのが「音声」です。単なる機械的な読み上げではなく、もっと人間らしく、自分らしさを追求する流れの中で、一番手軽で魅力的な素材、それが「自分の声」です。
今回は、わずかな音声データから自分の声のクローンを作り出し、好きな文章をしゃべらせることができるAI音声合成ツール「Fish audio」を紹介します。これを使えば、あなたも自分らしさのある動画を作れるようになるはずです。
Fish audioってどんなツール?

「Fish audio」は、最近出てきた音声生成AIツールの中でも、その手軽さと品質で注目を集めているサービスです。一番の特徴は「ボイスクローン」機能です。たった15秒から30秒程度の自分の声を録音するか、持っている音声ファイルをアップロードするだけで、AIがその声質や話し方を学習し、そっくりな合成音声を作ってくれます。
これまでは、専門的な知識や高い機材がないと難しかった音声合成が、Webブラウザ上で全部できてしまう手軽さが魅力です。
自分の声のクローンを作る方法
では、実際にどのようにして自分の声のクローンを作るのか、手順を見ていきましょう。
- アカウント作成 まずは「Fish audio」の公式サイトにアクセスします。Googleアカウントかメールアドレスがあれば、すぐに登録できます。
- ボイスクローンを選択 ログイン後、上部のメニューから「ボイスクローン」の機能を選びます。
- プライバシー設定の選択 生成する音声の公開範囲を設定します。個人的な利用が目的なら「プライベート」を選ぶと良いでしょう。
- 公開: 誰でもあなたの音声を検索し、利用できます。
- 非公開: リンクを知っている人のみが利用できます。
- プライベート: 自分だけが利用でき、共有機能はありません。
- 音声の名前を決定 作成するボイスモデルに、自分が分かりやすい名前をつけます。(モデル名は必須です)
- 自分の声を録音・アップロード ここが一番大事なステップです。持っている音声ファイルをアップロードするか、その場でマイクを使って録音します。このとき、感情や抑揚を込めて話すことが、より自然で人間らしいクローン音声を作るポイントです。淡々と話すのではなく、少し大げさなくらいに表情豊かに録音してみましょう。
- サンプル音声の保存 最後に、生成した自分の声を使える様に、作成ボタンから保存します。
7. 別の文章をしゃべらせてみる
できたボイスはライブラリに保存されます。保存した「このボイスを使用」を選んで、生成した自分の声に読み上げてほしい文章をテキストボックスに入力し、「生成」ボタンをクリックします。しばらくすると、自分の声のAIがテキストを自然に読み上げてくれます。
気になる料金は?
Fish audioには、気軽に試せる無料プランが用意されています。
- 無料プラン: まずは試してみたいという人にぴったりです。基本的な機能は無料で使えますが、生成できる量に上限(1ヶ月で1時間分)があり、商用利用はできません。
- 有料プラン(プレミアム): 月額または年額で、生成量の制限がなくなったり、一度に長い音声を生成できたりと、もっと本格的に使いたい場合に便利です。
まずは無料プランで品質を試し、必要だと感じたらアップグレードを検討するのがいいでしょう。
クローン音声の活用アイデア 自分の声のAIがあれば、アイデア次第でいろんな使い方が考えられます。
- コンテンツ制作の効率アップ: YouTubeやTikTok動画のナレーションを、何度も録り直す手間なく作れます。収益化していない動画なら無料でも使えます。
- オリジナルコンテンツ: 自分の声でポッドキャストやオーディオブックを作るのも面白いです。
- 業務での活用: プレゼンテーションの仮ナレーションを入れたり、業務マニュアルを音声化したりといった使い方もできます。
作った音声は、CapCutやVrewなどの動画編集ソフトで、画像や動画と合わせてみましょう。
Fish audioを最大限に活用するためのヒント
Fish audioの可能性は、単に自分の声をクローンするだけにとどまりません。いくつかヒントをお伝えします。
1. 多様な声質で録音してみる
自分の声のクローンを作る際、いくつか違うトーンや感情で録音してみるのも良いでしょう。例えば、通常の話し方、少し明るいトーン、落ち着いたトーンなど、複数の音声データを試すことで、より表現豊かなクローン音声が作れるかもしれません。Fish audioでは、複数のボイスモデルを保存できるので、用途に応じて使い分けることが可能です。
2. テキスト入力の工夫で表現力を高める
生成したいテキストを入力する際、句読点や記号をうまく使うことで、音声の表現力を調整できます。例えば、
- 「…」: 短い間を表現
- 「!」: 感情のこもった強調
- 「?」: 疑問形の発音
など、テキストの工夫次第で、AIがより自然なイントネーションで読み上げてくれることがあります。
3. 動画制作ツールとの連携で効果倍増
Fish audioで生成した音声は、動画編集ソフトに読み込んで使います。CapCutはスマートフォンでも手軽に使えるので、特に初心者におすすめです。
- BGMとの組み合わせ: 自分の声のナレーションに合わせて、適切なBGMを選ぶことで、動画全体の雰囲気を大きく変えられます。
- 効果音の活用: 重要なポイントで効果音を入れると、視聴者の注意を引きやすくなります。
- 字幕の自動生成: 多くの動画編集ソフトには、音声から自動で字幕を生成する機能があります。これを使えば、アクセシビリティ(使い勝手)も向上します。
4. A/Bテストで最適な音声を見つける
複数のクローン音声を作成し、それぞれの音声で短い動画を作って視聴者の反応を比較する「A/Bテスト」も有効です。例えば、同じ内容の動画でも、声のトーンや話し方が違うだけで視聴者のエンゲージメントが変わることがあります。視聴者の反応を分析し、より魅力的な音声を見つけていくプロセスも、動画制作の質を高める上で重要です。
AI音声技術と動画コンテンツ
AI音声技術は日々進化しています。Fish audioのようなツールは、その進化のほんの一部に過ぎません。これからは、より感情豊かで、状況に応じた柔軟な発話ができるAI音声が登場するでしょう。
動画コンテンツの世界も、AIの進化によって大きく変わっていくはずです。
- パーソナライズされた動画:より好感を持たれるナレーションや声の質が分析され、Youtube向けの音声の開発。
- リアルタイムなコンテンツ制作: イベントやニュース速報に合わせて、AIが自動で動画を生成し、自分の声でナレーションを付けるといったことも可能になるかもしれません。
- 多言語対応の動画: 自分の声で作成したコンテンツを、AIが瞬時に多言語に翻訳し、それぞれの言語で自分の声のクローンが話すといった技術も、すでに研究が進んでいます。
倫理的な課題と注意点
AIによる音声合成は非常に便利な技術ですが、同時に倫理的な課題もはらんでいます。他人の声を無断でクローンし、なりすましやフェイクニュースに悪用されるリスクは常に存在します。
自分や他人の声を問わず、生成した音声をどのように利用するかについては、常に注意が必要です。特に、著名人の声を無断で利用する行為は、肖像権やパブリシティ権の侵害にあたる可能性があるため、絶対にやめましょう。
まとめ
特別な知識がなくても、Webサイト上で手軽に自分の声のクローンを作ることができる様になりました。Fish audioのようなツールは、私たちの創作活動や情報発信のあり方を大きく変える可能性があります。
また、動画は流行りのものがあればすぐに真似されてしまうため、AIだけを使った動画はオリジナリティーを出すのは非常に難しいです。
まずはお試しで、自分の声の「分身」を生み出してみてはいかがでしょうか。自分の声が、他の投稿者との差をつけてくれるかもしれません。
※実際に今回リサーチをして、コメント欄に声に関するコメントもいくつかみられました。