Google Veo
みなさん、こんにちは。なかまゆです。
現在、AIによる画像・動画生成技術は、私たちの案件獲得や本業へ大きな変化をもたらしています。
しかし、多くのツールが乱立する中で、「結局、何から始めればいいのか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
今回は、Googleが提供するAIツールだけを使い、アイデア出しから画像生成、編集、そして動画化まで、一貫した流れでコンテンツを制作する具体的な手順を解説します。
「Google AI Studio」とは?
まず、今回全ての作業を行う中心的な場所となるのが「Google AI Studio」です。
これは、Googleが開発した最新のAIモデルを、誰でもブラウザ上から手軽に試すことができるプラットフォームです。
プログラミングの知識は不要で、Googleアカウントさえあれば、無料で利用を開始できます。
- アクセス方法: Webブラウザで「Google AI Studio」と検索し、公式サイトにアクセスして、お持ちのGoogleアカウントでログインするだけです。
https://aistudio.google.com/
この記事では、この「Google AI Studio」の中で、様々なAI機能をどう使っていくかを解説します。
1. ステップ1:AI Studioで「Imagenモデル」を使い、アイデアを画像にする
最初のステップは、頭の中にあるイメージを具体的な一枚の絵にすることです。
AI Studioにログインしたら、画像生成を担当するAIモデル「Imagen」を利用します。
左端メニュー Generate media
右画像 右上の Imagen
Imagenは、テキストの指示(プロンプト)から、非常にリアルで高品質な画像を生成する能力があります。
プロンプト入力のコツ
良い画像を生成するには、具体的で分かりやすい指示が重要です。
- 基本的なプロンプトの例: a cat sleeping in front of a bookshelf (本棚の前で眠る猫) →これだけでも画像は生成できますが、より質を高めるには、情景を描写する言葉を加えます。
- より詳細なプロンプトの例: photo of a cute cat sleeping in front of a bookshelf, warm interior lighting, cinematic, soft focus (本棚の前で眠るかわいい猫の写真。暖かい室内の照明、映画のような、ソフトフォーカス) →「photo of」で写真調に、「warm interior lighting」で雰囲気や光の当たり方を指定することで、AIはより具体的なイメージを掴むことができます。
まずは、このImagenを使って、動画の元となるキービジュアル(主役となる画像)を作成しましょう。

2. ステップ2:AI Studioで「Nanobanana機能」を使い、画像を編集・調整する
次に、Imagenで生成した画像の細部を調整します。AI Studioには、「Nanobanana」と呼ばれるAI画像編集機能も統合されています。(前回コラム参照)
左端メニュー Generate media
右画像 左上の Try Nano Banana
これは、Photoshopのような専門的な編集ソフトの知識がなくても、AIの力で直感的に画像を編集できる機能です。
具体的な編集指示の例
Nanobananaでは、人と会話するように、画像編集を依頼できます。
- オブジェクトの追加・削除: 生成した猫の画像に、「Add a steaming coffee cup next to the cat(猫の隣に湯気の立つコーヒーカップを追加して)」と指示すれば、AIが自然な形でコーヒーカップを描き足してくれます。「Remove the electric cord in the background(背景の電源コードを消して)」といった指示で、不要なものを消すことも可能です。
- 部分的な修正: 「Change the cat’s fur color to white(猫の毛の色を白に変えて)」のように、特定の要素だけを修正することも得意です。
- 画質の向上: 「Upscale this image to a higher resolution(この画像の解像度を高くして)」と指示すれば、AIが画像のディテールを補いながら、より鮮明な画像に仕上げます。
このステップで、動画化した際に違和感がないよう、画像の完成度をさらに高めていきます。
コーヒーカップの横に積まれた本を追加

3. ステップ3:AI Studioで「Veoモデル」を使い、画像に動きをつける
画像が完成したら、いよいよ最後の仕上げ、動画化です。AI Studioの中で、今度は動画生成AIモデル「Veo」の機能に切り替えます。
左端メニュー Generate media
右画像 右下の Veo
Veoには、一枚の画像に動きを与える「Animate an image」という機能があります。編集済みの画像をアップロードし、動きの指示を与えるだけで、自然な短い動画を生成してくれます。


今回生成した動画➡︎ Veo_実演_画像から動画.mp4
動きを制御するプロンプトのコツ
やりたいこと | プロンプトのキーワード例 |
全体の動き | Cinematic slow zoom in (ゆっくりズームイン), Gentle breeze blowing (そよ風が吹く) |
人物の動き | Her hair sways gently (髪が優しく揺れる), She slowly blinks (ゆっくりまばたきする) |
物体の動き | Steam rises slowly from the coffee (コーヒーから湯気が立ち上る), Candle flame flickering (ロウソクの炎が揺らめく) |
自然の動き | Clouds drift across the sky (雲が空を流れる), Water ripples slightly (水面がわずかに波打つ) |
これらのキーワードを組み合わせることで、静止画に動きを与えることができます。
Google AI Studioでの無料利用について
この一連のプロセスは、Googleが提供する「Google AI Studio」というプラットフォームを通じて、無料で試すことができます。ただし、無料での利用にはいくつかの条件があります。
- 利用できるモデル: AI Studioの無料枠で現在利用できる動画生成モデルは「Veo 2」です。これは、音声の同時生成には対応していない、サイレント(無音)動画を生成するモデルです。より高性能な音声付きモデル(Veo 3に相当)は、有料のGemini Advancedなどで提供される形となります。
- 生成回数の制限: AI Studioでの無料生成回数は、現時点では10回までとなっています。この回数は、ユーザーの報告によると、消費した時点から約24時間後に、消費した分だけが回復する仕組みと考えられています。(将来的に変更される可能性はあります)
この技術の具体的な使い道
では、こうして作られた「動きのある画像(ショート動画)」は、どのような仕事に繋がるのでしょうか。ここでは、具体的な活用例をビジネスの視点も交えてご紹介します。
- リールなどのSNS素材
- ターゲット: 企業や個人のSNSマーケティング担当者
- 提供価値: 静的な投稿よりもユーザーの目を引き、エンゲージメント率(いいね!やコメントなどの反応)の向上が期待できます。フルCGや実写動画よりも低コストかつ短時間で制作できるため、日々の投稿に最適です。
- ホームページのトップに出るイメージ動画
- ターゲット: ブランディングを重視する企業、個人事業主
- 提供価値: Webサイトの「顔」であるトップページに動きを持たせることで、訪問者に強い印象を与え、ブランドの世界観を直感的に伝えることができます。洗練されたイメージは、企業の信頼性向上にも繋がります。
- ECサイトの商品紹介動画
- ターゲット: オンラインで商品を販売する事業者
- 提供価値: 静止画だけでは伝わりきらない商品の質感や使用シーンを動画で見せることで、ユーザーの購買意欲を高めます。例えば、アクセサリーの輝きや、衣類の柔らかな素材感を表現するのに効果的です。
- デジタルサイネージ(電子看板)
- ターゲット: カフェ、美容室、イベント主催者など
- 提供価値: 店先のモニターやイベント会場のスクリーンで、アイキャッチ用の映像として活用できます。通行人の足を止めたり、空間のお洒落な雰囲気を演出したりする効果があります。高価な映像制作をせずとも、一枚の画像からリッチなコンテンツが作れる点が魅力です。
AI利用時の注意点
AIで生成したコンテンツを公開・利用する際には、いくつか知っておくべき注意点があります。
- 著作権について: AIが生成したコンテンツの著作権の扱いは、国や地域によって法律がまだ整備中の段階です。一般的に、完全にAIだけで生成されたものには著作権が発生しない、という見解もあります。クライアントワークで使用する場合は、契約内容を事前にしっかりと確認することが重要です。
- 商用利用の可否: 利用するAIツールの利用規約を必ず確認しましょう。Google AI Studioの無料枠で生成したものを、そのまま商用利用することは規約で制限されている場合があります。本格的な商用利用には、有料のAPI利用が推奨されています。
- 倫理的な配慮: 実在の人物に酷似した画像を生成したり、誤解を招くようなフェイク情報を生成したりすることは避けるべきです。Googleは、AI生成物には「SynthID」と呼ばれる電子透かしを埋め込むなど、責任あるAI利用に向けた取り組みも進めています。
まとめ
今回は、GoogleのAIツール群を使って、アイデアを動画にするまでの一連の流れと、その活用法について詳しく解説しました。
「Imagenで発想を形にし、Nanobananaで質を高め、Veoで動きを与える」。このワークフローを理解することで、みなさんも手軽にAIを使った動画制作を始めることができます。
まずは無料のAI Studioで、その可能性の一端に触れてみてはいかがでしょうか。